貴賓館の一室。

毛脚の長いふかふかの絨毯の上に大きめのソファがゆったりと並べられ、そこに、貴族の奥方らしき方々が四人と若い令嬢が一人座っている。

婦人たちは大体皇后と同じくらいか年上で、にこにこと穏やかな笑みを浮かべてエミリーが部屋に入ってくるのを待っていた。

緊張しながらも楚々と部屋の中に入ったエミリーの背後で、扉が静かに閉められる。


磨き上げられて艶々と光るテーブル。

壁際に置かれたワゴン上には上等のティーセットが用意されていて、窓の向こうの広いテラスには階段があり、庭に自由に下りられる作りになっていた。



「皆さまこんにちは。皇后さま、会にお招きくださり、ありがとうございます」

「エミリーさん、堅苦しい挨拶はしなくてよろしいわ。皆さん貴女とお話したくてウズウズしてらっしゃいますのよ」



何度も教育を受けた通り、王子妃らしく礼をとって挨拶したエミリーの手を引いて、皇后はにこにこと笑った。



「さぁ、こちらにいらして。堅くなることはありませんわ。とてもくだけた集まりですのよ。それに何度も言っておりますことですけれど、公の場でない時は、母と呼びなさい、ね?」

「・・・はい。お義母さま」

「そうそう。それでよろしいわ。さあ、皆様。お待ちかねの、あのむっつりとした我が息子、アラン王子を、唯一メロメロに蕩けさせてしまう、私自慢の嫁が来ましたわよ」



一際声のトーンを上げてそう言った皇后の様子はウキウキとして見えて、エミリーをお披露目するのを心底嬉しいと感じているようだった。

ご婦人方の間からどよめきの声が上がる。



「ぇ、メロメロ・・・?蕩ける・・・?お義母さま?あの――」


そんなことはないです、と言いかけるのを遮るように、エミリーを迎えるべく立ち上がったご婦人方から次々と声がかけられる。



「まあまあまあまあ王子妃様。よくいらしました。お会いするのを楽しみにしていましたのよ」

「やはり皇后様の仰る通りに可愛らしいお方ですわね」

「ほらほらぼんやり立っていないで」

「さあさぁこちらにお座りになって」



と、堅くなりがちな身体をなだめるようにあちらこちらから手が伸ばされ、エミリーはぽすんとソファに座らされた。

若い娘の集まり特有の、浮ついた気や嫉妬交じりに観察するような雰囲気は感じられず、興味深げな瞳をエミリーに注ぐものの、皆品よく落ち着いた雰囲気だ。

ふくよかな婦人一人と細身の婦人が二人と、エミリーと同じ年くらいの娘が一人。それに少し年配の婦人が一人。合わせて十個の瞳がエミリーを見つめる。



「ぁ・・はじめまして。エミリーと申します」