唇を割って侵入してきたアランに息も出来ないほどに絡められ、吸われ、余すことなく痺れるような甘い熱を伝えられる。

精悍な頬に置いていたはずのエミリーの手は力なく下に垂れてゆき、たまに解放される唇からは甘い吐息だけが漏れた。

とろんとしたアメジストの瞳に、アランの顔が映る。



「アラン様・・・」


「君が嫌だと申しても、もう決してこの手は離さぬぞ」



ソファの上に押し倒されたエミリーのドレスはいつの間にかするすると脱がされていて、下着だけになっていた。


アランが首筋に唇を這わせていくと、エミリーの甘い声が漏れ、小さな手はアランの服をキュッと掴む。

アランの唇が首元のある場所で暫く留まったあと、エミリーはふわりとした浮遊感に襲われた。

そのままシフォンのカーテンのほうに運ばれていく。



「あ・・あの、アラン様・・・わたし、まだシャワーを・・・」

「構わぬ。明朝にすれば良い」



エミリーの身体はクッションのきいたベッドの上にそっと寝かされ、武骨な指先が下着の紐にかかる。


「・・・ぇ、でも、やっぱり」

「良いと、申しておる・・・エミリー、君だけを愛しておる」

「・・ん・・・」

「私の心を乱すのは、君だけだ」

「アラン・・さ・・ま・・・・ん・・」



エミリーの最後の抵抗の言葉はアランの唇によって遮られ、武骨だけれど優しく動く指先と身体を這う唇に思考も意識も飛ばされ、最後には体力も奪われた。




すやすやと寝息を立てるエミリーの身体に丁寧に毛布を掛け、額にキスを落とし、アランはベッドからそっと抜け出た。

開けたままだった分厚いカーテンに手を掛け、窓の外を見上げる。


空には二つの月が並んで浮かんでいる。

重なり合う日は、あと数日のうちにやってくるだろう。

それが過ぎれば、エミリーにとって初めての大きな行事が始まる。

それは王家のしきたりであり、避ける事の出来ない物だ。

外出の期が多くなり、守るのが難しくなる。

万全の態勢を整えておかねばならない。



アランはカーテンをぐっと握り締めてサッと閉じると、ソファ傍の灯を消し、ベッドの中に戻った。

乱れたエミリーの髪を整え、頬の下に腕を滑り込ませると、自らも眠りに入る。


「おやすみ、エミリー・・」