念じようにもパニックになってしまったあたしに、

伊奈が一歩一歩近づいてくる。


あたしはただ、覆い被さるように庇ってくれた瑛さんの体を抱きしめた。


そして、もうダメかもと思った瞬間。


「!!」


伊奈が、突然飛び退いた。


「なに……!?」


彼がいたあとは、地面がえぐれている。


一体、なんなの……?


ますますパニックになった頭に、聞きなれた声が聞こえた。


「もーやめぇや、オッサン」


「……オーリィ!!」


「ハーイ♪元気?

じゃ、なさそうやなぁ」


森の中からあたし達の前に出てきたのは……。


金髪碧眼の王子様。

オーランド・ロットンだった。


「……誰だ、キミは」


不意を突かれた伊奈は、片腕に傷を負ったらしい。


指先から血がポタポタと垂れた。


「さぁ。

その手じゃもう術は使えへんやろ?

今日のところはおとなしく引きや」