無事に生んでくれてありがとう。
そう言うと、野ばらは泣きながら頷いた。
野ばらの頬を手で包んで、そっと顔を近づける。
目を閉じ、僕たちは初めてキスした。
がさがさで冷たい野ばらの唇を温めるように、強く深く……。
柔らかな繋がりに幸せを感じた瞬間、野ばらの唇が離れた。そして、
──────動かなくなった。
──……あたしのように過去ばかり振り返らず、未来をしっかり見据える子になるように、どうか「未来」と名付けてください
もう一度、野ばらにキスした。
遠くで未来の泣き声が聞こえる。
ごめん未来。
今だけは野ばらとお別れさせてくれ。
今だけは……───