「そうだったんですか…確かにここの景色は綺麗ですね。私も去年の春にここへ引越してからそう思いました」

流れるような優しい声色で、その上綺麗に笑うものだから私はただ見とれるしかない

「あ…すいません。いきなり話し掛けて…迷惑でしたか?」

黙ってしまった私を不快に感じているのかと勘違いして眉を下げる

「違います!!貴方が綺麗過ぎて何も言えなくなってしまったんです!!」

…って何言ってるんだ私

思わず立ち上がって叫んでしまった後すぐに後悔した

これじゃあまるで女性に言う口説き文句じゃないか

カァァ…と赤く染まっていく顔を隠すように下を俯いてヨロヨロと席につく


あー…終わった

折角話し掛けてくれたのに…


グルグルと後悔の渦に呑み込まれそうになっていたら

クスリと笑う声がして



「そんなに熱烈に口説かれたのは初めてです」

徐に顔を上げれば、彼は僅かに目尻に溜まる涙を拭いながら笑っていた





…遠くで到着のアナウンスが聞こえた気がした