海月ってこんなに綺麗なものだったんだ…



しばらくこの光景に見惚れていたら廣瀬さんに声を掛けられ、丁度真ん中にあった二人掛け用の長椅子に腰掛けた

誰もいない、二人きりの空間

自然と胸の鼓動も速さを増していく

「そういえば、職員がこの世界にいられるタイムリミットは20分だと言っていました」

水の中を緩慢に漂う海月達を見つめたまま独り言のように呟く

その横顔は淡い光に照らされ息を呑む程に美しかった

「…そうですか」

やっと出てきた声は思いの外小さくなってしまう


それは、まるで


「私達が電車の中で話せる時間と同じ位ですね」

「……ッ‼」

海月の揺蕩う姿を眺めていた廣瀬さんは徐にこちらへ顔を向ける

その顔は優しげで…慈しむような表情を浮かべていて

どうしようもなく胸が締め付けられた


それ、私も思いました

同じ事を考えていてくれた

そんな些細な事でも嬉しくて


言葉にする代わりに、柔らかい笑みを浮かべて繋がれた手にほんの少し力を込めた


私の想っている事が、この手から伝われば良いのにと願いながら