私にだけ聞こえる声で「嫌かもしれないけど今だけ、ね?」なんて言われたら首を縦に振るしかない

というか、大歓迎です‼

首を縦に振る代わりにニコリと笑えば、通じたのか廣瀬さんは嬉しそうに顔を綻ばせた

「………」

職員は廣瀬さんの表情(かお)にしばらく見惚れていたがいきなり目をカッと見開いて

「よ、よろしかったら一番右側のコーナーはいかがですか?カップル限定で幻想的な海の世界を楽しんでいただけますよ」

「そ、そうなんですか…」

蘭々と輝く眼差しを向けたままずいっと目の前まで詰め寄られ苦笑しながらも、職員の夢のような話に胸が踊る


「へぇ。じゃあそっちにしようか」

「…あ、はいっ」

楽しそうな声色とキラキラ笑顔で言った廣瀬さんに胸がキュウッとなる

うわ…めちゃくちゃ可愛い

そりゃあ職員の目もハートになるよ…

でも、今その笑顔を向けられているのは自分なんだと思えば、嬉しさが何倍にも膨れ上がる

私は緩みきった顔のまま廣瀬さんに手を引かれ、カップル限定のコーナーへ進んでいった