人混みの中、二人並んで中に入ると
そこはもう海の中だった
「わぁ…綺麗…」
透明な硝子でできたトンネル
照明の光が水に反射してキラキラと光って
見上げれば沢山の魚が気持ち良さそうに泳いでいて、私は思わず感嘆の声をあげた
「ええ…これでもう少し人がいなければ更に楽しめるんですけどね」
隣で苦笑する廣瀬さんに同意するように頷いた
本当に、嫌になるくらいの人の多さだ。それこそ人酔いしそうなくらい
ここで廣瀬さんを見失えば見つけるのは一苦労どころか水族館を出るまで会えなくなるかもしれない
しかも、現在人に押されて廣瀬さんの少し後ろをついて行っている状態だから、いつはぐれてもおかしくないのだ
それだけは避けたい
「あの…廣瀬さん」
「はい、なんですか?」
ゆっくりと歩きながら振り返り、優しい目をこちらへ向ける
駄目元で聞いてみよう
一呼吸おくと、私は意を決して口を開いた
「…廣瀬さんの服の端っこでもいいんで掴んでてもいいですか?」