「………」

だけど

いくら待っても衝撃は起きない

かわりにフッと小さく息を漏らしたのが聞こえてきて

恐る恐る目を開けると




「やっぱり可愛いですね。篠原さんって」


先ほどの雰囲気は一気に払拭され、柔かく笑う廣瀬さん

その余りのギャップに張り詰めていた緊張の糸がプツリと切れた


「…ッ…意地悪いです…」

背凭れに背中を預け、深く息を吐く

まだ心臓が痛いくらい鳴っている

またからかわれたのか…私


「すいません。どうも篠原さんを見ると困らせたくなるというか…焦った顔が見たくなるというか…」

ほんと…自分でもよく分からないんですって困ったように笑う廣瀬さんにこっちが困ってしまう

「…廣瀬さんって、私の事嫌いですか?」

もう、そうとしか考えられない

目の前で笑う端整な顔をした人物をジッと見据えれば慌てて首を横に振る


「まさか。やっとこうして二人で食事が出来てるんです。嬉しいのは勿論ですけど、嫌な筈は絶対にありません」

「…そう…ですか」

思いがけない好意の言葉に思わずサァッと顔が朱に染まる

それは友達としてだとわかっているけど、凄く嬉しいと感じる自分は至極単純だと思う


「私も、こんな美人な友達と食事が出来て嬉しいです」


「…まぁ、美人は正直ちょっと複雑ですけど、その笑顔が見れたので良しとしまょう」

ふにゃりとだらしなく笑う私の頭を軽く撫でて、「そろそろ出ましょうか」と笑う廣瀬さんはやっぱり綺麗だった