駅から少し行った所で見えてきた南欧風の家の前で廣瀬さんは立ち止まった
「ここです」
「あ、はい!」
つ、ついに最初の難関が来てしまった…
今更ながら、緊張の波が押し寄せてきて体がガチガチに固くなってゆく
「イタリアンレストランなんですが…パスタやピザはお好きですか?」
「はいっ!大好きです!」
廣瀬さんが勧めてくれるものならなんでもっ!
「そう。良かった」
安心したようにふわりと笑い、店の入り口へ足を進める
廣瀬さんは優雅な身のこなしでお店の扉に手をかけゆっくりと手前に引いた
「さあ、中へどうぞ」
「あ…ありがとうございます」
違和感のない自然な動作にクラッときたがなんとか立て直し、ぎこちない動作で店の中へ入った
白を基調とした落ち着いた感じの店内で、老若男女問わず多くの人で賑わっていた
「いらっしゃいませ」
ニコニコと愛想の良い女性の店員が声を掛ける
「二名様で宜しいでしょうか?」
「はい。出来れば海がよく見える席がいいんですが」
緊張している私の代わりに廣瀬さんが笑顔で答えた
店員は廣瀬さんを見るなりポッと顔を赤らめて「畏まりました、それではご案内致します!」と私と同じくらい不自然な動きで私達を席へ案内した