23分という時間は私とあの人が二人でいる僅かな時間のこと

この間は他の駅に着いても一人か二人しか乗らない

乗ったとしても最後尾であるこの場所にわさわざ乗る人は滅多にいない

それでも私がこの場所に乗る理由はたった一つ…あの人が乗っているからという不純なものだ



今日も…話せなかったな…

小さく溜め息をついて席を立つ

ちらりと彼を見ると、相変わらず目線は下でぺらりぺらりと分厚い本を捲っていた


扉が閉まり、私を置いて電車は動き出す

ガタンゴトン

ガタンゴトン

見えなくなるまでボーッと眺めたあと、大学の最寄り駅に着く電車へ足を進めた




今年の春から大学へ通い始めた私は、この毎朝の行為が日課となりつつある


勇気のない自分はいつも少し離れた席で窓の外を眺めるふりをして美人なあの人を盗み見ることしか出来ない


きっとこれからも…あの人があの電車に乗らなくなるまでずっと



そう思っていた