初夏
青々と木々が生い茂り、強い日差しが照りつけ始める今日この頃
辺りを見渡すと子供達が蝉の鳴き声を頼りにあっちだこっちだと叫びながら虫取りに励んでいたり
老夫婦が他愛もない会話をしながら若者顔負けの機敏さで畑を耕している
良くいえば豊かな自然がある町、悪くいえば交通の便が悪い田舎
ガタンゴトン
ガタンゴトン
私はいつものように都心にある大学へ通うため、平日にも関わらず30分に一度しか来ない電車を駅のホームで待っていた
当然、時間きっかりに電車は来る
重い扉が開き中へ入った
ガランと空いた…中央の通路を隔てて向かい合うようにして備え付けられた一繋ぎの座席
いつものように私の指定席である入口近くの角の席にゆっくりと腰かける
この空間にいるのはいつも私と視線を落として静かに本を読んでいるあの人
然り気無く少し離れた…左斜め前に座っている彼の姿を目の端にとらえると少しホッとして
電車に揺られながら私はいつものように外を眺め始めた