ガタンゴトン
ガタンゴトン

電車の揺れる音と共に景色は目まぐるしく変わりゆく

私は顔を上げて廣瀬さんの次に続く言葉を待った


「いつから…見ていたんですか?」

いつから

そんなの初めてこの電車に乗ったときからずっとだ

「えと…少し前から」

3ヶ月前からずっと貴方を見ていました…なんて言ったら絶対引かれそうだと思い曖昧に返事をする

そういえば…廣瀬さんも私の事を"いつも窓を眺めてた"って言ってた…

「廣瀬さんはいつから私を知っていたんですか?」

廣瀬さんは少し考え込む仕草をして、ふっと顔を上げた

その表情は酷く優しげで


「多分…篠原さんが思っているよりずっと前から…かな?」

ほんのすこし

哀しそうだった


「え…」

"次は~○○駅~○○駅~お出口は右側です"

駅員のアナウンサーが車内に響き渡る

廣瀬さんはニコリと意味深に笑うと「この駅で降りるでしょ?」と言われ考える暇もなく慌てて立ち上がった

「また、明日。篠原さん」

今度はいつもの柔らかい笑みを浮かべる

さっきのは気のせいなのかと思わせるほどに



「…はい。また、明日」