これほど23分を短いと思ったことはなかった

プシューッという音と共に扉が開き、タイムリミットを知らせる

「嗚呼…いつもここで降りますよね?じゃあまた明日」

なんともなしにそう言ってふわりと笑い再び本に目を向ける

知って…くれてたんだ

「あ、あのっ!!」

駅のホームに降りる間際、あの人に声をかけると

彼は徐に顔を上げて何?と笑顔で聞いてきた

私は大きく深呼吸して彼に向き直る




「名前…何て言うんですか?」

彼は少し驚いたような顔をしたけどすぐに柔らかい笑みを浮かべて

「…廣瀬雪斗(ヒロセユキト)。貴方は?」

「…篠原成実(シノハラナミ)です」

「そう…じゃあ篠原さん。また明日」

「……ッ」


トクン…と心臓が高鳴る


また明日


改めて言われるとなんだか恥ずかしい