奇声を上げて笑い転げるモエを、ランシュは慣れた様子で抱き起こし、服に付いた雪を払い除ける。


「はいはい。雪は溶けたら水になるんだよ。風邪ひいちゃうから、もうおしまい」
「ゆき、おいしそう。食べられる?」
「食べちゃダメ」


 モエの手を引いて、ランシュは転ばないようにゆっくりと、王宮の入口に向かって歩き始めた。

 二人のやり取りを微笑ましく思いながら、結衣もロイドと手を繋いで歩き始める。

 娘のモエは、ロイドよりもランシュに懐いている。
 ロイドは忙しくて、帰りが遅い事も多いので、よく遊んでくれるランシュが気に入ったのだろう。

 そのせいか、女の子なのに人形やぬいぐるみよりも、ランシュの作るロボットの方がお気に入りだ。

 栗皮色の髪と瞳で、見た目は結衣の血を色濃く受け継いでいるが、中身は機械好きのロイドの血を引いているようだ。

 結衣は機械が苦手で、未だに上手く扱えないのに、モエはパソコンの操作もお手の物なのだ。