自分の何気ない一言を覚えてくれていたのも嬉しかった。


「ありがとう。あなたってやっぱりすごい」


 結衣はロイドを抱きしめて、頬に感謝のキスを送る。


「中はもっとすごいよ」


 正門の向こうから、ランシュが笑いながら手招きした。

 少し着ぶくれた正門の衛視に、挨拶をして門をくぐる。

 少し進むと、王宮の前庭は一面の銀世界へと変わっていた。

 庭の隅にある一番大きな木がクリスマスツリーに見立てられ、電飾でキラキラ光っている。

 所々にある灯りが、雪に覆われた庭園を一層白く輝かせていた。
 そこへ空から粉雪が、絶え間なく静かに降り注いでいる。