すっかり日が沈んだ頃、結衣はモエの手を引いて、王宮へ続く長い上り坂を上っていた。

 ロイドが温かい格好をしてくるようにと言っていたが、坂道を上がっているうちになんだか暑くなってきた。

 汗をかいたらモエが風邪をひくのではないかと心配になってくる。

 ところが王宮の正門が近付くにつれて、どういうわけか空気が冷たくなってきた。

 そして正門の前に厚手のコートを羽織ったロイドを見つけた時には、息も白くなるほど寒くなっていた。

 ロイドのコートは以前冬の日本に里帰りした時、買ったものだ。
 温暖なクランベールでは、着る必要がない。


「どうしてこんなに寒いの?」


 ロイドの元にたどり着き、開口一番尋ねた結衣の鼻先を、白いものがフワフワと通過した。

 まさかと思い、結衣は空を見上げた。