ロイド側の人々は事情を知っているとはいえ、口裏を合わせるのが大変なので誰も呼ばなかった。

 国王と王子には、特に内緒にしてある。
 盛大な式にしようと勝手に盛り上がりかねないからだ。

 元々ロイドには親族がいない。
 海外から来てもらうのは大変だからという事にした。

 神社で式を挙げたのは、ロイドの希望だ。
 表向きは。

 結衣としては、ウエディングドレスを着てチャペルで挙式、というのにも憧れていた。
 だがチャペルウエディングには、誓いのキスがある。

 出席者は自分の家族と親戚だけだ。
 その前でキスをするのは、たとえ頬や額であっても充分照れくさい。

 ロイドの事だから、絶対唇にするはずだ。
 おまけに思う存分とかされたら、出席者の間で一生語り継がれるだろう。
 弟の蒼太なんか、顔を合わせるたびに、ひやかしかねない。