私は呆気に取られながらも半蔵のいう〝提案〟に耳を傾ける。


「俺は徳川家康の家臣だ。これは俺個人の提案じゃない、家康のものだ。」

「家康がわざわざ?」


そう。

一大名が個人に、しかも敵方にこんな事を言ってくるのは普通はない。



___家康は何を?



「お前と直接話したいと言ってる。もちろん危害は加えるつもりはない。」

「そんな都合のいい話あるわけない!」


私はキッパリと断る。

こんなの罠に決まっている……。



「果心居士の言っていた事を確かめたくは無いのか?」



半蔵の衝撃的な発言。


半蔵がなぜ果心居士の事を……⁈



「果心居士の正体もすべてわかる……これほどいい話はないと思うが?」


確かにそうではある。

果心居士の正体、そして家康の企みがわかれば……。

これからの歴史を変える手掛かりになるかもしれない。

幸村の未来を変えるために私はここに来たんだから___



「……わかりました。家康の所に行きます。」

「話が早くて助かる。」


そう言ってフッと笑う半蔵に私はキッと視線を向けて言う。


「どうせ行かないといっても、力ずくで連れて行くつもりだったんでしょう?なら同じです。」


半蔵は少し目を細めた。


「女にしたら大した奴だ……では行くぞ。」

「少し待ってください。」


私は手紙を届けに来た葛葉を呼び寄せる。

そしてある動作を葛葉に指示して佐助さんの元に帰した。


「助けを呼んだ訳じゃありませんからね。それじゃあお願いします。」

「承知した。」


そう言うと半蔵は指笛で馬を2頭呼び、私を乗せた馬は自然と半蔵の馬を追いかけて行く。


___ちょっと心配掛けるけどごめんね、幸村。



私は浜松城を目指す。