それからはしばらく無言だった。

でも幸村の表情はどこか笑っていた。

まるで無邪気な子供みたい……

チラッと幸村を見た。

……目が合う。

幸村は再び笑顔を見せた。


「真琴、あそこを見ろ。」


幸村が指差す方向に目を向ける。

小さな山の上に小城があった。

「お城?」

「俺らの居城、砥石(トイシ)城だ。」

私はてっきり上田城に行くもんだと思ってた。

砥石城が居城と言うことは……

武田家が滅ぶ前………
そのことは間違いないだろう。


最悪の事態を思い出してしまった。

でも……今は歴史上どの辺りなのかな。


それによっては歴史を変えられるかも……

「ねぇ、幸村。上田城ってお城ある?」


「上田……?どこだそこは。」

上田と言う地名がまだ無い。

だけど、幸村は真田の姓を名乗っている。

つまり、“長篠の戦い”直後……!


「あ、ごめん。勘違いだったみたいっ」

「そうか?それより、早く城に行って飯にするか。」

「うん。」


なんとか誤魔化した。

未来を明かしていいのかな………。

未来を知ってる私はどうやって幸村達と付き合えば……


私の不安は募るばかりだった。