あれから幸村と城下を巡った。
和服屋で小袖を見たり、団子屋でお茶をしたり。
子供にからかわれる幸村を見て笑ったり……。
いろいろと楽しい時間だった。
かれこれ昌幸様と別れてから2時間程経っていた。
「そろそろ父上も話がついただろう。戻るか。」
「うん。そうだね。」
楽しいとやっぱり時間が経つのって早いんだなぁ……。
ちょっと残念。
そうは言っても昌幸様の方が大事だし、戻らない訳にはいかない。
私たちは安土城の方へ向かった。
「これこれ、そこのお若い夫婦どの!」
その途中で小物屋のお爺さんに声を掛けられた。
って、め、夫婦?!
ななななんて恥ずかしい事を……!
「老爺!めめめ夫婦などでは無い!」
幸村も同じ事を思ってたらしく、顔を真っ赤にして訂正していた。
「それは失礼致しました。てっきり夫婦だとばかり……」
「あ〜〜!繰り返さなくていい!」
「お若い事で。」
お爺さんはニコニコと笑ってる。
に、憎めない……!
「そんなお二方にこれは如何かと思いましてお声を掛けさせていただきましたのです。」
そんな私達をよそに木箱を取り出すお爺さん。
そしてその木箱の中身を見せる。
「わぁ……!すごい…!!」
私は思わずそう口にしてしまった。
お爺さんの木箱の中には桜のチャームの銀製のブレスレットとネックレスだった。
しかも現代にあるのと殆ど変わりはない。
「老爺、これは?」
「この小さい輪が〝腕輪″で大きな輪が〝首輪″なるものでございます。」
「これ、お爺さんが作ったんですか?」
「はい。私のお手製でございます。」
お爺さんの言葉には嘘偽りはなさそうなんだけど……。
こんなに現代のものと変わらない物が作れる物なのかな……?
でも、すごく可愛い!
私がブレスレットとネックレスに魅入っている傍らで、幸村がお爺さんに何か小声で尋ねているけど聴き取れない。
「今なら……でどうでしょう?」
「もう少し……でどうだ?」
「ふむぅ。可愛いお嬢さんにおまけしてそれで……。」
「……???」
キョトンとしてる他ない。
「真琴、すまぬが少し先に行っててくれぬか?」
幸村が珍しく必死に手を合わせて頭を下げてきた。
な、なんだろう?
「わ、わかった。じゃあ先に行ってるね。」
「すぐに追いつく!」
そう言ってお爺さんの元へ戻る幸村。
まぁ、幸村もなにか事情があるみたいだし、少し先に行こう。
そんな訳で私は1人、先に城門を目指した。