昌幸様、幸村、私の3人の珍道中。
5日掛かって安土に着いた。
昌幸様はすれ違う女の人を片っ端から口説くし、
川に落ちそうになった私を助けようとして逆に幸村がずぶ濡れになるし……。
まさに珍道中だったと思う。
まぁ、無事に着いて良かったけど。
そして今は安土城の城門。
「これがあの安土城……!」
「噂に聞いてはいたが、天守というものはすごいな……。」
教科書でみた安土城の復元図なんかよりもずっと豪華。
高くそびえる天守には私も幸村も圧倒されるばかりだった。
そんな私たちをよそに昌幸様は門番に何か取り合っているみたいだけど…。
「ならぬのか?」
『なりませぬ。上様は安房守様のみと仰せでございます。』
「むぅ…。食えぬ奴よ。」
苦々しい顔付きで戻ってきた昌幸様。
「どうかされたんですか?」
「お主らに会談の場に居合わせようと思うたのだが…信長め、儂一人で参れと言いよったわ。」
そういう昌幸様は本当に残念そうだ。
私としては昌幸様が無事に戻って来れるのかさえ心配なんだけど……。
「父上、仕方ありますまい。こちらの信用にも関わりましょう。」
「そうだが…なぁ?」
いや、そういって私を見られても…。
私も幸村と同じ意見だしなぁ。
信長が相手となれば信用の点については一番重要なことになる。
昌幸様はそれを承知だろうし、それこそ命に刃向えば危うい。
「私も幸村と同じ意見です。昌幸様の吉報を待ってますよ?」
「仕方ないのぉ。では幸村よ。」
「はい?」
「真琴と安土の城下でも楽しんでおれ!儂の吉報を待ってな!はっはっはっ!」
「ち、父上!」
昌幸様が城内へと消えていく。
幸村は顔を少し赤くしたがそれも一瞬のこと。
「真琴、安土は賑やかな城下だ。父上が言ったことだ、楽しもう!」
そう言って袴姿の私をヒョイッとお姫様抱っこして馬に乗る。
「わっ⁈ち、ちょっと⁈」
「落ちるなよ!」
幸村は馬の腹を蹴って城下を目指した。
どこかで鶯が鳴いている。