「小山田信茂をはじめ一族郎党は処断されました。」
小山田の一族が処罰されたのを聞いたのは真田家が降伏して3日後の事だった。
その情報を運んで来たのは海里こと才蔵。
才蔵はやはり忍。
私情はいっさい挟まなかった。
「そうであったか…ご苦労、才蔵。」
「はっ。」
昌幸様は勝頼様の時と同じ表情を浮かべていた。
信頼関係にあった信茂と昌幸様。
最後の意見の違いから遂には交わることは無かった。
やり切れない思いがあるのは当然だ。
でも、そんな表情もわずか。
すぐにいつもの表情に戻る。
これが当主としての覚悟___
「真琴。」
「はい、なんですか?昌幸様。」
「今から儂の供をせよ。」
「供を?どこに行くんですか?」
すると昌幸様はあの不敵な笑み。
あ、まさかこれ……。
「今から信長に挨拶に行くぞ!いまの領地がどれだけ守られるかの瀬戸際だぞ!はっはっはっ!」
私は呆気に取られる。
なんて楽しそうな昌幸様なんだ……!
下手したら領地没収かもしれないのに!
肝が据わってるというのか……
それだけ確信があるのか……。
「安心せい!もちろん幸村も連れて行く!」
にっと笑う昌幸様。
当然、私は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「もう!!昌幸様ぁぁぁぁ!!!」