籠城を始めて2日。

それは突然の出来事だった。


「大将〜そろそろ来るみたいですよ?」


そう呑気な声で路炉ノ間の天井から降りてきた佐助さん。


「ふっ。そうか!御苦労!」

「佐助さん、何かあったんですか?」

「お!真琴ちゃん!ふっふっふ。大将が待ってたもんが遂に来たんだよ。」

「……??」


その時私は何が何だか分からなかったけど、すぐに分かった。


『昌幸様、織田方から和平の使者が参ってます。どうなさいますか?』


1人の家臣の方がそう言って路炉ノ間に現れたのだ。


和平の使者……?

なんでこんな時期に?


「その使者を大広間へ通せ!真琴は儂とともにその場に居合わせよ!」

『はっ!』


家臣の方は素早く去って行った。

一方、私と言えば驚きを隠せずに声がうわずってしまった。


「わ、私もですか⁈」

「真琴が疑問に思っているであろう事がはっきりとわかるぞ?」


はははっ!と豪快な笑いを残して昌幸様は一足先に大広間へ向かった。


私の考えが読めるなんて……!

さすが後に表裏比興の者と呼ばれるだけはあるなぁ……。


歴史の人物の偉大さを感じながら、私は昌幸様の後を追って大広間へ向かった。