馬に乗ってかれこれ20分位経っている。

一城の主の息子が一人で遠くに来るとは。

御供が心配するでしょうに……。


「ねぇ、幸村。こんな遠くまで来て怒られないの?」


首だけ、幸村の方向に向けながら話しかける。


「怒られぬ。…いや、あまり父上達と会わぬのだ。その代わり佐助がガミガミ言うけどな。」


幸村は苦笑いした。

お父さんと会えないのは流石にちょっと寂しいかもしれない。


「でも、ガミガミ言ってくれる人がいるんでしょ?」


「あぁ。」


「ふふ。じゃあ少しは賑やかだね♪」


幸村は遠くを眺めた。


「そうだな。」


幸村は少し笑った。


その時の幸村の笑顔はとても優しいものだった。