〜地下牢〜
「海里!」
「真琴!お前無事だったんだな?」
座敷牢の真ん中で正座をしていた海里。
私の姿を確認すると立ち上がって格子の前に近寄る。
「どうやら術も解けたみたいね。長い間こんな所に閉じ込めて申し訳なかったわね。」
沙江さんがそう言って座敷牢から海里を出してくれた。
「悪いな。今の状況はなんとなくわかってる……俺の術を解いてくれたんだよな?」
「ええ。でも完全に解けたわけでは無いわ。私には一つを解くのが限界。」
沙江さんは肩をすくめて言った。
でも、こうして海里と話せるのも沙江さんのお陰。
感謝してもしきれない。
「1つを解くのが限界って…術はいくつ掛かってんだ?」
「2つよ。1つは2つの人格を創るもの。そしてもう1つは創り上げた人格しか表に出ないようにするものね。」
「なるほど……じゃあ、後者の術を解いたって感じか。」
「その通り。もう1つはあなた次第ね。他人が解けるようなものじゃないわ。」
海里の術は完全に解けた訳じゃないんだ……。
またふとした瞬間に冷酷な海里が表れるかもしれないんだ……。
すると海里が私の事をじっと見ていた。
「な、なに?」
「ばーか。何年幼馴染だと思ってやがる。お前が考えてることなんかすぐ分かるんだぞ?」
そして私のほっぺをぐい〜と引っ張る。
いたたたたた⁉︎
「な、何すんの!」
私も海里のほっぺを引っ張ろうとするが、
「お前にはもう心配掛けねーよ。」
海里は優しく微笑んで私の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「海里……。」
よかった。
海里も無事でいてくれて……。
「2人の再会を邪魔するようで悪いけど…海里、あなたも昌幸様に呼ばれてるわ。一緒に行くわよ。」
こうして私達は3人で昌幸様達のいる路炉の間に向った。