いくら2人きりになれたのは嬉しいとはいえ、さすがに緊張する。

あれからずっと下を向いたままだ。


私を包む幸村は細身の見た目とは違って意外としっかりしていた。


考えれば二人乗りは幸村達と新府城に行った時以来だけど……。

それ以上に今の状況は初めて幸村と会った時を思い出させる。

もうあれからだいぶ経つんだなぁ……。


「真琴。」

「ん?」

「不思議だ。今思い出すのは真琴と初めて会った時の事なんだ。最後に2人で馬に乗ったのは新府城の時なのにな……。」


そう言った幸村の顔は微笑んでいて。

その顔もあの時を思い出させる。


それにしても幸村も同じ事を考えてるなんて……。


「ふふっ。」

「な、何がおかしいだ?……それもそうだな。」

「違う違う。私も同じ事思ってたから。」


幸村は頬を少し赤らめて私から視線を逸らす。

ほんと不器用だと思う。


幸村から直接気持ちを聞いたわけじゃない。

だけど__

不器用な彼だから。

すぐにわかる。



___きっと幸村も私と同じ感情を抱いているって。





今がチャンスなのかも……

2人しかいないこの状況。

誰にも遠慮しないで本人の口から本当の気持ちを教えて欲しい。


「ねぇ、幸村。」

「なんだ…?」


振り返って幸村の瞳をじっと見つめる。

幸村も私と瞳を合わせている。


「幸村は私の事を……」




どう思っているの?って言いかけたその時。






「おっと、ごめんよ!」


その声と共に近くの木から影が。


「さ、佐助⁈」

「佐助さん⁈」


緑の見慣れた忍装束。

紛れもなく猿飛佐助その人だった。


佐助さんは頭を軽く掻きながら申し訳なさそうにしてる。


「いやぁ、俺も野暮な事は好きじゃないんだけどさ…大将(昌幸)からの命でね。」


私たちはしばらく口をパクパクさせていることしかできなかった………。