私たちは馬に乗り急いで勝頼様の後を追う。

隊列の最後尾が見えてきた。

…やはり兵たちは走って進軍していた。


「やっぱり走って進軍してたか!」


幸村の表情は一層厳しくなった。


「真琴、そのまま隊列に入るが兵たちに気を付けろ!」

「わかった!」


そして隊列の中へ速度を落とさず入っていく。

当然、兵たちは止めに入る。


『お主ら何者ぞ⁈ここは通さぬ‼︎』

「武田重臣、真田昌幸が次男幸村だ!お館様に火急の用だ!通せ!」

『し、失礼しました!』


兵たちは道の真ん中を開けてくれた。

その中を駆けながら感じる何ともいえない緊張感。


「これが……戦……」


皆生きようと必死なんだ。


「真琴?」

「あ、ごっごめん…初めての戦だからちょっと戸惑っちゃっただけ。」

「………無理はするなよ。」

「うん。ありがとう。」


こんな時でも幸村は優しい。

それはとても心強い事だった。


いつか…私が幸村に恩返しする!

そう胸に刻んだ。


そうしているうちにだいぶ先頭まで進んできた。


「真琴!お館様が見えたぞ!」

「小山田さんは?」

「……見当たらない。」


やはり小山田信茂は武田家を裏切るつもりなのかな……。

重臣が君主の側を離れるなんて尋常ではない。

でもある意味チャンスかもしれない。

勝頼様を連れ戻さなければ……!


「幸村、ここは私に任せてくれない?」

「え?……構わないが……」

「ありがとう。……幸村は万が一に備えておいて?」


その一言にすごく不安そうな顔をする幸村。


もう、心配性なんだから……。


「大丈夫。信じてて?」


思いっきりの笑顔で答える。


「あぁ。無理だけはするな。それは約束だ。」

「うん。……じゃあ行ってくるね。」



私は1人、勝頼様の元へ向った。