幸村と私は城門にたどり着く。
__が、勝頼様の姿が見当たらない。
既に軍が動き始めていたのだ。
「まさか駆けて進軍しているのか!」
幸村は悔しそうな表情を浮かべる。
本来は城下に近いところでは駆け足で進軍などしない。
城門を出て外を見てみると遠くの方に勝頼様と小山田の姿が見えた。
……やっぱりおかしい。
そして勝頼様の隣にいる小山田が何も言わずに一緒に進軍してることも……
「幸村……一つ言い忘れてたことがあるの。」
「なんだ?」
「あの小山田さん…武田家を裏切るの…」
「何だと……⁈小山田殿が……?」
幸村は 信じられない というような顔をしている。
無理もない。
勝頼様の信頼の厚い武田家の重臣なのだから。
「勝頼様の説得がうまくいったみたいだったから油断してた……」
「仕方ない事だ、真琴は悪くない」
「それにしたって私はその事を知ってた……」
「でも、本当に小山田殿なのか?」
「え?」
私は幸村の疑問の意味が一瞬分からなかった。
「小山田殿は普通の人間だ。術など使えない。」
「あ!確かに……じゃあ誰が……」
その時だった。
背後にものすごい殺気を感じる。
えっ……いつの間に⁈
「真琴っ危ない!」
__ガッ
そう声が聞こえた時には私の体は横に吹き飛ばされていた。
そして私の居た位置には。
「真琴……無事みたいね……っ」
右腕を押さえる沙江さんの姿があった。
「沙江さんっ!右腕がっ…!」
私を守った代償に…沙江さんの右腕にはクナイが突き刺さっていた。
「私の事より早く幸村様を連れて逃げなさい!」
「で、でもっ!」
「早く‼︎」
沙江さんの初めて見る厳しい表情。
「……っ、幸村!逃げるよ……!」
己の状況を悟って幸村の手を引き、走り出す。
「逃がすかよ。」
私たちの前に立ち塞がる影。
私はその顔を見て動けなくなった……