〜新府城・勝頼の部屋〜
「お館様、御出立の準備の方は?」
「うむ……」
私と幸村は勝頼様をお迎えに部屋まで来ていた。
勝頼様はきちんと甲冑を着込み、その堂々とした体格によく似合っていた。
ただ……ひとつ気になる事があった。
昨日までの覇気がまるで感じられないのだ。
まるで魂を抜かれたかのように……。
とにかく、目に光はなく別人のようだ。
「お館様、何処か体調でも優れませぬか?」
「……いや、いたって何もない。」
「そうでございますか……。」
幸村も勝頼様の異変に気付いているみたいだ。
しかし今は一刻を争う事態。
この場から早く離れる必要がある。
「ではお館様、優れぬようでしたらすぐに申して下さいませ。進軍を止めます故……。」
「うむ……」
そう言って重たい甲冑をガシャリと鳴らしながら立ち上がり、軍の待機する城門へ向かって行った。
「ねぇ、幸村。……気付いた?」
「あぁ。お館様の様子が明らかにおかしい。」
「勝頼様は病気でも患ってるとか聞いたことは?」
「いいや全く……」
幸村は腕を組み考え込んでいたが、すぐに何か思い当たる事があったらしい。
顔をバッと上げて私を見た。
「真琴…もしかしたら術をかけられているのかもしれない……!」
「術……⁈」
それはにわかに信じがたいものだったがまるで別人のような勝頼様を見てるとそれも否定はできない。
「だとしたら早くお止めしなければ!」
幸村が走り出した後を私も追いかける。
ここまで来て武田家を滅ぼすわけにはいかないんだから……!
「お館様、御出立の準備の方は?」
「うむ……」
私と幸村は勝頼様をお迎えに部屋まで来ていた。
勝頼様はきちんと甲冑を着込み、その堂々とした体格によく似合っていた。
ただ……ひとつ気になる事があった。
昨日までの覇気がまるで感じられないのだ。
まるで魂を抜かれたかのように……。
とにかく、目に光はなく別人のようだ。
「お館様、何処か体調でも優れませぬか?」
「……いや、いたって何もない。」
「そうでございますか……。」
幸村も勝頼様の異変に気付いているみたいだ。
しかし今は一刻を争う事態。
この場から早く離れる必要がある。
「ではお館様、優れぬようでしたらすぐに申して下さいませ。進軍を止めます故……。」
「うむ……」
そう言って重たい甲冑をガシャリと鳴らしながら立ち上がり、軍の待機する城門へ向かって行った。
「ねぇ、幸村。……気付いた?」
「あぁ。お館様の様子が明らかにおかしい。」
「勝頼様は病気でも患ってるとか聞いたことは?」
「いいや全く……」
幸村は腕を組み考え込んでいたが、すぐに何か思い当たる事があったらしい。
顔をバッと上げて私を見た。
「真琴…もしかしたら術をかけられているのかもしれない……!」
「術……⁈」
それはにわかに信じがたいものだったがまるで別人のような勝頼様を見てるとそれも否定はできない。
「だとしたら早くお止めしなければ!」
幸村が走り出した後を私も追いかける。
ここまで来て武田家を滅ぼすわけにはいかないんだから……!