翌朝。
岩櫃城への移動が決まり、真田屋敷では荷をまとめるので忙しい。
侍女さん達が急いで必要なものだけをまとめている。
勿論、私もお手伝いだ。
「……ふぅ。これである程度まとまったかな?」
甲斐の2月は暖かい。
汗をかいてしまうほどだ。
……汗を流したいがそんな事も言ってられない。
そんな事を思いながら手拭いで汗を拭う私に幸村が声をかける。
「真琴!今からお館様の元へ一緒に来てくれ!」
「わかった!すぐ行く!」
昌幸様に任されただけあって幸村も信幸様も休む余裕がないようだ。
私に声をかけた幸村はすぐに立ち去って行った。
………やっぱり大変だよね。
世話役の人たちを含めた多くの人の移動。
荷物もそれなりにあるし……
何よりこれはただの引越しというわけではない。
あくまで『撤退戦』であることには変わりないのだから……
「真琴〜!行くぞ〜⁈」
馬屋の方からの幸村の声が聞こえる。
「あ、ごめん!ごめん!」
私は走って馬屋へ向かった。