そんな時だ。


「…らぁ!……幸村は何処だ!」


少し遠い所から幸村を呼ぶ声が聞こえる。

この声は……昌幸様だろうか?


その声を聞いた幸村は慌てて廊下に出る。


「父上。ここに!」


さすが親子……親の声はすぐ識別できるみたい。

「そんなところにいたか!」


昌幸様は幸村を見つけると私の部屋までやって来た。

その昌幸様の格好を見て私は驚く。


「昌幸様⁈その格好は……」


昌幸様は甲冑を着て戦仕度していたのだ。


「お?ここは真琴の部屋だったか。真琴も一緒なら丁度良い!」

「父上まさか……織田がここまで?」

「いや、儂は今から岩櫃城へ戻る。幸村、お館様を岩櫃までお連れしろ。いいな?」


え……⁈

勝頼様を岩櫃へお連れしろ……?

ということは……!


「昌幸様!勝頼様は岩櫃にいく御決断をされたのですね!」

「そうだ。明日決断すると言っていたが先程決断したそうだ。真琴のお陰だ。」


昌幸様の表情は安堵が伺える。


やった!説得成功したんだ!


「やったな、真琴!」


幸村が満面の笑みで肩をぽんぽんっとたたく。

「うん……!」

「では儂は先に行く。頼んだぞ?」

「「承知しました!」」


これで武田家の寿命は間違いなく延びる。

そう思い、私は胸を撫で下ろした。


これでまた新たな目標ができた。


『勝頼様を無事に岩櫃城へお連れする』


また明日から頑張らなければ!