✳︎side真琴✳︎

私は部屋の文机の上に突っ伏していた。


「幸村の馬鹿ぁ……。」


ちょっと期待した私が馬鹿みたいじゃん!

ちょっと何でもいいから言ってくれたっていいじゃん……。


__つまりはいい歳していじけていた。



今思えば、最初は憧れの『真田幸村』に会えて嬉しかったし、歴史を変えようって思った。

生きて欲しくて……。



でも……。

今はそれだけじゃない。


幸村は憧れの『真田幸村』だけど

私と時を共にしている幸村は……


あくまで “幸村” 。


私がタイムスリップしてきて出会った……。


私の知らない“幸村”だった。

優しくて、正義感の強い青年だった。

歴史の本や資料を読んだだけじゃ知り得ない幸村だった……


そんな幸村に私は恋をしたんだと思う。

幸村に………。



勘違いかもしれないけど……たぶん幸村も同じような想いを持っていると思う。

それがなんとなく分かるから、尚更もどかしく思う。



「今からでもいいから言いに来ればいいのに……。」



___トットットッ


その時私の部屋の前で足音が止まる。


え……?まさか……


「真琴?いるか?」


聞き間違える訳がない。

この声は……幸村だ。