『余程の策士なのだろう?』
__正直この言葉は重かった。
私は戦国の人間じゃない。
ましてや戦なんて知らない。
そんな私が人の生死に関わる選択が出来るわけがなかった。
___だけど。
この時代に来て、幸村や昌幸様
そして沙江さんに佐助さんに信幸様………
私を受け入れてくれた大切な人たちができた。
いつまでも頼りっぱなしな訳にはいかない。
私は前を向きキッと勝頼様に視線を向けた。
「勝頼様、私はけっして策士ではありません。」
「策士でない?」
「はい。信じてもらえないかもしれませんが……私は未来から来た者です。」
「何……?未来からだと?」
「……400年後の日ノ本から。」
勝頼様は動揺した素振りは見せなかった。
一国の主たるものそう簡単に情報を鵜呑みにはしないのだろう。
勝頼様もかなりの切れ者。
対応の仕方は分かっているのだ。
「証拠はあるのか?」
この言葉に高圧的なものはなかった。
むしろ、優しく語りかけてくれた。
私は虚を突かれた。
普通の大名なら「戯言を」とか言って相手にもしない。
それどころか、からかっていると思われてもおかしくはない。
それなのにこの方は………
昌幸様が必死に守ろうとしている理由がわかった気がする……
「少しお待ちください!」
そして私は一緒に持ってきていたショルダーバックをあさる。
___本番はこれからだ。