とりあえず頭のなかで私の知ってる歴史を順を追って整理し始める。
__織田軍が武田領内に侵攻して…
武田の家臣のほとんどは戦いもせずに降伏する…
高遠城は最後まで抵抗し籠城するも落城…
勝頼は新府城を棄て、重臣の城へ移動するもその道中に裏切られ自害に追い込まれる……
おおよそこんな感じだ。
ここまでハッキリ思い出せるのに、どうしても最後に裏切った重臣が思い出せない。
ほんと、私って役立たずだと思う。
お…だった気がする。お……おい…?
片っ端から当てはめて思い出そうとした
その時だった。
___ザッ
目の前を黒い何かが通過した。
物凄いスピード。
それに……動物と言うわけでもなさそうだ。
やばい…どこいった……?!
気配を捉えようと意識を集中させる。
「お前か?真田の新参者の女って。」
「?!」
急に後ろで男の声がした。
声からいって私とそう変わらない年齢だと思う。
そんな計算をしながらゆっくりと振り返る。
背の高く、短い茶髪……そして黒の忍装束。
そして彼の顔を見る。
切れ長の目に透き通るような瞳……
「え……?」
私は動揺するしかなかった。
知ってる……私はこの青年を知ってる…
ここにいるはずがない
私の幼馴染み。
忘れる訳がない。
「海……里………?」