*side海里*
俺は月夜の森の木々の上を駆ける。
此処は甲斐。
半蔵様に頼まれた特別忍務を果すため、新府城下を目指している。
まさか今度は俺が真田の女を連れてくるに頼まれたときは正直驚いた。
徳川忍でも新参者の俺にこの任を任せる……意図が全く読めない。
それに……何なんだ?
その真田の女って……
まぁ、半蔵様に恥を掻かせないために確実に果すだけだけどな。
「…………そろそろ真田屋敷か。」
気合いを入れ直す為……でもないが軽く呟く。
屋敷の門が見えた。
さーて……下に降りるか。
木々の上を駆けるのを止め、地面に降り立った。
「貴様、何者だ。」
後から声がした。
やっべ、気が付かなかった。
と、言うことは武田忍か。
段々、気配を感じ始める。
……ざっと5人か?
ま、殺れないこともない。
「おい、どこの者だ。」
武田忍の問いかけは続く。
「俺か?」
そう言ったときにはすでにクナイが飛んできていた。
軽く宙返りをしてかわす。
「俺の名前を知るのはあの世に行ってからにしな」
___忍法・残月
俺を中心に円状に死角なく無数のクナイが相手へ向かって突き刺さる。
さて。
次だ、次。