幸村はしかめっ面で父親の放った言葉の意味を考えている。

私も昌幸様が何を言いたいのか分からない。

と、ふと幸村が何かひらめいたらしい。


「父上はわざわざ敵方が真琴を連れ出そうとした事に意味があると?」

「そうだ。」


敵方が私をあえて連れ出そうとした理由?

どういうことだろうか。


「あの忍は無防備だったお前を狙わなかった。人質にするのならば幸村の方が都合がいいはずなのにだ。」


「はい。真琴はまだ功績も上げていない無名な新参者……」


そう言いながら幸村の顔は確信したような顔つきに変わる。


「その真琴を狙ったと言うことは向こうは真琴について何かを知っている……。」


「ほう。話が早くて助かるわ。」


流石、戦略一家と言ったところか。

あんなに短い間に意図を読み取るなんて……!


「って、つまり私に何かあるって事?!」

「そう言う事になるなぁ。まぁ、真琴とは会ったばかりで流石に相手の意図までは読めんがな。」


昌幸様がちょっぴり眉をひそめて言った。

うーん…思い当たる節はないんだけどな~。


「まぁよい。それは後でだ。腹も減ったし飯にするかな。」


そう言って、よっこいしょ。と言わんばかりに昌幸様はゆっくり腰を上げ、部屋を去って行った。


その後ろ姿を見て思う。

昌幸様って不思議な方……。