「真琴、ちょっと待っててくれ。」

幸村と信幸様が、茶屋の中へ入っていく。

私は、外の腰掛けに座る。


__シュタっ


「真琴。何か元気が無いわね?」


後ろで沙江さんの声がした。
後ろに振り向く。

そこには、腕を組ながら茶屋の壁に寄り掛かっている沙江さん。


「いえ…そんなことないですよ?」


悟られないように笑顔で答える。


「あなた、上田で本を見てたわよね。それが原因じゃないの?」

「………。」


そっか。

私は気付かなかったけど沙江さんは見てたんだ…!


「やっぱりそうね?」

「……はい。」


沙江さんが苦笑いを浮かべている。


「大丈夫よ。幸村様達には言わないわ。」

「ありがとうございます。」


沙江さんは今や私のお姉さん代わり。

面倒見も良いし、一番信頼できる。

一人でこの時代に迷いこんだ私が、辛い思いをしないのは沙江さんのおかげでもある。


「私で良ければ聞くわよ?」

「沙江さん……実は……」