私を気遣ってか、街道を割りとゆっくり馬で進む。

……勿論、私は馬に乗れないので幸村の前に乗っている。


『幸村…お兄さんは私が未来人だって知ってるの?』


隣の信幸さんに聴かれないように小さい声で幸村に尋ねる。


『いや。兄上は知らない。父上は知ってるがな。』

『ふう~ん。』


再び、私は前を向く。

信幸さんは知らないんだ…。

ま、発言に気をつければ、気付かないよね。

そう言えば、沙江さんは知ってたなぁ。

佐助さんにでも聞いたのかも。


あ。

そう言えば、沙江さんの姿が見当たらない。

ちょっと周りを見渡す。


う~ん。見当たらないなぁ。


……と言うよりは、見つけられないのが正しいと思う。

沙江さんの忍務は私の警護だからいなくなることはないし…


__チカッ


そんなとき、右側の茂みで何かが太陽に反射して光る。

光の方を見る。


沙江さんだ!やっぱり見えないように!


沙江さんも私が気付いたのを確認したらしい。

沙江さんが近くにいるとなるとやっぱり安心する。


「真琴、休むか?」


幸村が、尋ねる。


「ううん。大丈夫だよ」

「本当に大丈夫か?そろそろ小諸を過ぎるんだが…」

「え?!もうそんなに?!」


気が付かない内にだいぶ遠くまで来ていたみたいだ。

あまり疲れていないのは、幸村の馬術のおかげだろう。


「じゃあ、休もうかな。幸村もお兄様も大変でしょ?」

「真琴どの、お気遣いいたみいる。では、そこの茶屋で休もう。」


信幸様が少し先にある茶屋を指した。

誰にたいしても丁寧に接するあたり、長男だなぁって思う。


「それがいいですね。」

「そうしましょう、兄上。」