~1時間後~

私は新府城へ向かう準備を終え、城門の前にいた。

__って、言っても何を持っていいかわからなかった。

取り合えず当初持っていた、ショルダーバッグごと持ってきたけど…

役にたたなそうなものばかり入っている。

携帯電話に音楽プレイヤー、財布、絆創膏……なぜかカメラ。

そして、通学電車の定期……未開封の飴・二袋。

高校生の私の鞄にはその程度がいいところ。

あ~…何でまともに教科書とか入ってないんだろう(汗)

無いことが分かっているのに、教科書を探してみる。

__ごそっ

あっ!教科書?!
珍しく置き勉しないで持ってたんだ!


と、ウキウキしながらソレを取り出す。


「本……?真田三代記……。」

それは教科書ではなかった。

真田家を中心に書いた、歴史小説。


“真田三代記”

私がこの時代にくるちょっと前に買った本。

「何で気付かなかったんだ……!」

自分の間抜けさを思い知ってしまった。

(早く続きを読んで、役に立てれば……)

__ぺらっぺらっ

2、3ページめくった時点でおかしい事に気が付く。

(ページが全部……真っ白……!)

一通りページをめくってみるが…やはり真っ白。


「どういう事……?!」


そんなとき、幸村が兄・信幸と共に荷物を持って来た。


「真琴、待たせたな!」

「真琴どの。よろしくお願いいたします。」


信幸さんの方が幸村よりも体格はがっちりしている。

とても礼儀正しいお兄さんだった。

「は、はい。こちらこそ!」

挨拶をしながら、私は気付かれないように本をバッグに戻す。


この事は……誰にも言わないでおこう。

余計な心配は掛けたくないから………。