*佐助・幸村side*
「父上が?珍しいな……」
「幸村、今から準備するか?」
佐助が戻ってきた。
……が、伝えられたのは、仕事の報告ではなく父からの伝言だった。
“例の新参者と家族をを連れ、新府城へ来い”
__例の新参者は真琴の事らしい。
父上にしては急なものだ。
俺たちを新府城へ向かわせなければならない程の何かがあるのか…?
新府城は父上が普請を受け持っている城だ。
まだ完成とは言えないが、城としての働きとしては十分できる。
__なにしろ、今までにないくらい規模のでかい城だ。
いつも自慢気に父上が城の構造について語っていた。
父上は真琴と同じで、最初から新府城で籠城するつもりだったのかもしれない。
家族を移すとなると、お館様(勝頼様)を説得させる最終手段だろう。
__その場で籠城する意思を示すのだ。
「あぁ。急いで準備に取りかかってくれ。」
「あいよっ」
佐助が準備の為、姿を消す。
部屋には俺一人。
兄上も今頃は、準備しているだろう。
俺も真琴に伝えなくてはな。
___タッタッ
誰だ?
廊下を小走りしている音がする。
その音は、俺の部屋の前で止まった。
「幸村っ!」
この愛らしい、凛とした声は……