「そうか…武田は滅びてしまうのか…」

「……うん。歴史上ではそう。」

私は、武田討伐で武田家が滅びる事を話した。

流石に、幸村の顔に動揺が表れている。

確かに、武田家は滅びる。

武田勝頼が織田軍接近と共に、新府(シンプ)城を捨てて他の城に逃げたからだ。

__新府城だったら、防げたと思う。


実際、幸村の父・真田昌幸はそう進言していた。

もし、昌幸の進言が採用されたなら……


「…でも、まだ歴史を変えられるかもしれない。」

「本当か?」

「お父様に伝えて。軍義に召集されたら、新府城で籠城する事を進言してって」

幸村は強く頷いてくれた。

「佐助、天井にいるんだろ?」

『あ、バレてた?』

天井から声がした。……佐助さんの声だ。


って、えっ?!

結局佐助さんにも聞かれちゃったって事?!


「盗み聞きしてたなら、わかってるな?」

幸村が苦笑いしなから、天井に話しかける。

『はいはい。“昌幸様に使いを出せ”でしょ?』

「頼んだぞ。」

「あっ!ちょっと待って!」

佐助さんを慌てて引き止める。

『ん?どうしたの?』

「えっと、昌幸様にとにかく、進言を通すように伝えて下さい」

一番肝心な事だ。

進言が通らなければ意味はない。
まずは、そこから。

『承知した!』

返事と共に、佐助さんの気配が消える。

……だけど、私は暫く黙って天井を見ていた。


__トントンっ


そんな私の肩を幸村が優しく叩いた。

「俺に付いてこい。」