そんな時、暫く黙っていた幸村が口を開いた。

「佐助、ちょっと二人だけにしてくれないか?」

「はいよ、了解。」

そう言うと、佐助さんは音もなく姿を消した。

__さすが、忍。

広い部屋に幸村と二人きりになった。


「何か話でもあるの?」

「真琴、未来の話をしてくれないか?」

「え………?」

私の心臓は跳ね上がった。

思わず、幸村から思いっきり目を逸らせてしまった。


言えないよ……主家の武田家が滅びるなんて。

そして、山道を落武者狩りから逃げる事になることも……


「ねえ、幸村…“長篠の戦い”は終わってるんだよね?」

「あぁ。終わってる。」

「お父様は今お城の普請をしてる?」

「……あぁ。新府城というな。」

やっぱり…私の読みは間違ってなかった。

じきに織田軍が武田討伐を始めるだろう。

もしかすると、もう進軍しているかもしれない。

悩んでいても仕方ないことは分かってる。

でもやっぱり……!


「真琴。」

「な、何?」

「……一人で抱え込まないでくれ。」

「………!!」

言葉を失った。

やっぱり、知将として知られるだけある。

簡単に見破られていた。


「はは……バレちゃったね」

___困ったように笑うしかなかった。

「話してくれるな?」

「……うん。幸村には敵わないや。」

私は、幸村に全部話すことを決心した。