「ねぇ、風歩ちゃん?その“ナツメ”って…」



知り合い、なの?
友達、なの?

“名前”で呼ぶほど親しいの?

聞きたいことはたくさんあったのに…


「あのさ、」


パチッと。ふいに目を開けて。

顔を上げた彼女に遮られてしまった。


「この時間は、サボるんだよね?」

「えっ?」

「教室には戻らないんでしょう?」


壁に寄りかかりながら、少しトロンとした瞳で聞いてくる。

…か、可愛い。

これは、半分意識が飛んでるバージョンだ。


「だったら…」


返事をし忘れた俺を“肯定”と認識したのか…


「ちょっといい?」

「へっ?風歩ちゃ…」

「……眠い。」


彼女の身体が傾いて、俺のほうへと倒れてきて。

そのまま…
コテンと。俺の胸にもたれかかるように動きを止めた。

思わず抱き止めちゃったけど、これは…


「コンクリートは固いんだも…ん」


言いながら、再び閉じていく瞼。

程なくして聞こえてきた寝息。





「……寝ちゃった?」