「へっ?」
「人が出ていくのが見えたから…」
「…ああ。」
あくまで“さりげなく”。
隣でうとうとしかけている彼女に聞いてみる。
あの後――
“男子生徒”を完全に見送ってから中に入った。
俺の姿を捉えるなり、彼女はいつものようにさっと身構えたけど…
“連れ戻しに来た”わけじゃないことがわかると、この通り。
俺のことなど気にもせず、“定位置”でそのまま寝る体勢に入ってしまった。
さっきのことなんて、まるで忘れてるみたいだけど…
俺は気になって仕方ない。
だって、
ここに“2人で”いたんだよ?
2人きり、で…
「…ナツメ、でしょ。」
「えっ?」
「生意気な1年。最近ずっと、我が物顔でここに居座ってるの。」
瞼を閉じたまま。面倒くさそうに呟く彼女。
ナツメ、って…“名前”だよね?
1年生って…
「おかげで、ゆっくり昼寝もできないよ。」