昨夜、ねぇ…

さすがに、あの“騒ぎ”はくるみちゃんにも言えないなぁ。

彼女の名誉にも関わるしね。うん。


「ほら。やっぱり心当たりがあるんだぁ?」

「いや…」

「ダメだよぉ?なんでも“ほどほど”にしないと。くるみだって…「くるみちゃんは?」


まだまだ続きそうなくるみちゃんの“カンチガイ”。

止めるには、これしかない。


「先輩とはどう?相変わらず仲良しなの?」


くるみちゃんの言葉を遮って、素知らぬ顔で問いかけてみれば…


「えーっ?くるみはねぇ…」


すぐに反応して、ぱああっと瞳を輝かせるくるみちゃん。

それ以上聞かなくても、十分わかるけど…



「新ちゃんのお母さんがね、わんちゃんを飼い始めたのね?」

「うん。」

「だから、毎朝一緒にお散歩してるの!今朝も…」


…うん。すごく幸せそう。

こういう顔を見てると、俺のほうまで幸せになってくるから不思議だよね。



「それでね…」



くるみちゃんの“幸せオーラ”に癒されていたのも、束の間。



「おいっ」


俺たちに向けられた、低くて重い声。


「風歩は、どこだ?」