「萌、お兄ちゃんも好きだけど、本当は“お姉ちゃん”がよかったの。だから…」
超がつくくらい、人見知りで恥ずかしがり屋の萌。
彼女とも、今まで絶対に会おうとはしなかったわけだけど…
「だから、早く“お姉ちゃん”になってください!」
最近は、やたら懐いてるんだよねぇ。
どうやら、彼女は
「萌ちゃんの気持ちがわかる!」らしく、
萌が学校に行くのを渋っていると知ると、
「私が、学校との“うまい”つき合い方を教えてあげる」と言って、萌にかまってくれるようになった。
……なんで?
そりゃ確かに、将来的には“姉妹”になるわけだから、
仲良くなってくれるのは嬉しいんだけど…
なんとなく、しっくりこないんだよねぇ。
彼女は、お世辞にも“面倒見がいい”とは言えないし、
萌も、こんなふうに他人に懐いたことなんて…今までなかったと思う。
だから、心配してたんだ。
昔からずっと、
俺の後ろに隠れて、絶対に前には出てこなかった。
自分からは何にもしないし、何もできない。
俺がついていてあげられるうちはいいけど、一生一緒にはいられない。
だから、
常に“どうやって自立させるか”を考えていたのに…
「……行かないの?」
…えっ?
気がつけば、玄関の前。
すっかり“普通に”戻された萌が、不思議そうに俺を見つめていた。
「浅海さん、行っちゃったよ?」
……いつの間に?