瀬音に痛いところを
指摘されていると
廊下から、非常に大きな
足音が聞こえてきた。


「スクープスクープ!」


ガラッと勢いよくドアを
開けて、教室に入ってきたのは
もう一人の幼馴染の紅葉。


「なんだ、朝から騒々しい。」
「瀬音ったら、相変わらず
 毒舌なんだから-。」
「恵、うるさい。」
「ガーン」


瀬音は、私にいつも冷たい。
そういう性格だから仕方ないけれど。


「聞いて聞いてー、けいくんが
 話しかけてくれたのー!」
「へー、なんて?」
「細谷、おはよう。って…
 きゃー!」


紅葉は、自分で愛しの斎藤けい先生の
真似をして、黄色い声をあげながら
騒いでいる。


「しかも、おはようだけかよ。
 そんなの誰にでも言うだろ。」
「ふん、瀬音には恋する乙女の
 気持ちがわからないのね。」
「何が恋する乙女だよ。」


小学生のころから、私たち
3人は、このように言い合って
すごしている。意外とこの
やりとりが、バランスを保って
くれているのだと、私は思う。