私のクラスには、
“笑わない少女”がいる。
これは、彼女が全く愛想が
ないから、付けられた
陰のあだ名である。
もちろん私は、そのように
呼んだりはしたくないが。

初めて見たときから、
私は彼女のことが気になった。
なぜならば、私と同姓同名
だからである。

私は遠藤恵で、彼女も
遠藤愛美。読みは「めぐみ」である。
こんな偶然があるのかと
思ったら、私はいてもたっても
いられなくなったわけだ。
その日から、彼女と友達に
なるために、作戦を練り始めたのである。


「愛実ちゃん
 おはヨーグルト!」


教室の中に入り、愛美ちゃんを
みかけるたび、開口一番
この一発ギャグだ。

それを見て、幼馴染の一人である
瀬音が、白い目で私を見る。


「毎朝毎朝、飽きないのか?」
「瀬音ちゃーん、そんな
 冷たいこと言わないでよ!」
「気持ち悪い。だいたい、遠藤さん
 迷惑がってるのが、わかんないのか?」


確かに、瀬音の言うとおり
迷惑だと思われているかも
しれないけれど、私は
どうしても愛美ちゃんと
仲良くなりたいのだ。