「隣、座ってもいい?」

「……どうぞ」

 隣に座ってウィルの顔をのぞいてみるけれど、顔を反らされてしまう。

「……傷は、どうですか?」

「あ、ダネルが手当てしてくれたよ。痕も残らないって」

「そうですか、良かった」

 ほっとしたように息を吐いて、また罰が悪そうに下を向く。

「すみません。僕の所為です」

「どうしてウィルが謝るの?あたしのこと、守ってくれたのに。お礼言おうと思ってたのよ」

「いえ、僕がもっと注意しておけば、そもそも怪我をせずに済んだんです。何が入っているか分からない扉の中を、あなたにのぞき込ませたまま開けてしまうなんて……」

「それなら、あたしが気をつけてなかったからよ。守ってくれて、嬉しかったわ。ありがとう」

「……どういたしまして」

 やっとにこりと笑ってくれた。目も、穏やかな青色に戻っている。

「……僕が、昔人間だったって言ったら、驚きますか?」

「えっ!?」

「ふふ、驚きましたね」

 いたずらっぽく微笑まれる。

「人間が、吸血鬼になるの?」

「ええ。吸血鬼に襲われて、生き残ってしまうと」

「ウィルは……襲われたの?」

「ずいぶん昔の話ですけどね」